HOME > 令和6年度安芸市森づくり研修がはじまりました
令和6年度安芸市森づくり研修がはじまりました
農林課 : 2024/09/17
小さな林業(自伐型林業)を知ってもらうこと、林業の学びの場をつくることを目的に毎年開催している「安芸市森づくり研修」が今年もはじまりました。
全4回の講座で、小さな林業(自伐型林業)が大切にする木の伐り方(森を見て、伐るべき木を見極める)や環境負荷が少なく、壊れにくい作業道の造り方を学ぶ林業研修です。また、資格(特別教育修了証)の取得が可能な講座も含まれていて、修了証取得をきっかけに森づくりに関心を持ってもらいたいという思いもあり毎年開催しています。
令和6年9月14日(土)、15日(日)に第1回研修「チェーンソー取扱い研修」が安芸市役所会議室で行われ、テキストを中心にした座学とチェーンソーの実機を使ったメンテナンスの講義が行われました。
研修の冒頭では、事務局から研修の目的や、この研修が「安芸市流域森づくり構想」の取組の1つであることについての説明があり、続いて、研修の運営を行う自伐型林業推進協会から林業や森林整備についての講義がありました。
日本は世界第2位の森林率(第1位はフィンランド)を誇る「杜(もり)の国」であることが示され、江戸時代の資料「江戸期林政論」には、「国の宝は山也 山の衰えは 則ち国の衰えなり」(山は木あるときは、神気さかんなり、木なきときは、神気おとろへて、雲雨をおこすべき、ちからすくなし)と記されていることにも触れて話が進みました。山が健全な状態に保たれていないと豪雨などの際に災害を引き起こす、あるいは気候変動にも大きく影響するということが江戸時代から知られていたことが紹介され、「杜の国日本」ならではのこの知恵が、今忘れられつつあるとの説明が行われました。
続く座学研修では、テキストに沿ってチェーンソーの取扱いや現場での安全管理についての講義が行われました。
講義ではテキストに書かれたことだけではなく、講師の経験に基づく「考え方」や林業にまつわる知識についても解説が行われました。例えば林業で使用する「ヨキ」について。山仕事で必須の斧に刻まれた三本の線と四本の線には、樵(きこり)の作業を見守る山の神様への信仰が表現されているとのことでした。三本線は「ミキ」=「神酒、御神酒(おみき)」を、反対側の四本線は「ヨキ」=四つの『気』(木を育てる4つの要素『太陽、土、水、空気』)を表しています。
木も命を持っています。木を伐るということは、その命を絶つ行為でもあります。その木はきっと意味があってそこに居たわけで、その命をいただく、そのことを忘れないための印だとのことでした。また、伐採の許可や作業の安全を祈願するための御神酒(おみき)を捧げたいが、遠い山奥まで運べないので、この印を御神酒(おみき)の代わりにしてお祈りをすることもあるとのことでした。このほか、大きな木が倒れてきても「身=3」を「よける=4ける」という縁起担ぎでもあるとのことです。
この他、講義で印象的だったのは、木を伐る、林業をすることにおいて「土を見る」ことが重要だとのお話でした。森を歩いていると木が根本から曲がって上に伸びているのを見かけることがあります。これは木が生えている地面が木ごと流れたことの証拠だといいます。木を見ることで土の動きを知ることができるのです。また、理想的な森林づくりのためには林地の表土が雨で流されないことが重要であり、そのために下草が必要になります。下草は腐葉土にもなり木に栄養を与えます。講師は何度も「いい木を作るには、いい土を作らなければならない」、「山(森)へ行ったら是非、土を見てほしい」と説明されていました。
また、山(森)がどのように水を蓄えているのかを知ることが必要だとのことでした。大きな面積の森林を伐採すると今まで水の出ていなかった場所から水が流れ出すことがあり、木が水を蓄えていたことを実感するといいます。また、山間部で土木工事をよく見かけるようになったと感じるとのことで、それだけ土砂が山(森)から流出してきているのではないかとのことでした。土が一度に流れ出てしまい、本来ゆっくりと水に溶かされて川によって海へ運ばれていた森の恵みであるミネラルも海へ届けられず、ただ雨として降った水が川から海へ流れているだけになってしまうのではないかとのことです。
安全対策についての講義では、「チェーンソーの技術がつけば木を伐ることは出来るようになるが、一番難しいのは “伐る木を見極める” ことだ」と講師は強調されていました。木は一本一本違う。枝のつき方も違うし、曲がり方(重心の位置)も違う。その木を伐るときにどのように倒れるか想像することが大切。予知することで危険を避け、万が一の際にも行動が一歩早くなるといいます。また、思ったとおりに倒れなかったときは、どうしてそのようになったのかを考えることで知識が深まり、その積み重ねが安全を担保することになるとのことでした。
現代はいろいろなことが便利になっていて、見方によれば人の感受性が鈍くなっているともいえます。山(森)に入ると様々な状況に囲まれます。感受性が優れていれば危険を早く察知することができます。特にチェーンソーのエンジンが回り出すと心理的にプレッシャーがかかるので視野が狭くなりやすく特に注意が必要だとのことでした。
実機を使った講義では、チェーンソーを分解して構造を勉強したり、メーカーによる機能・構造の違いを学んだりしました。また、チェーンソーの刃を研ぐ「目立て作業」も学びました。目立て作業をする際の体の姿勢(目線の位置)や手の角度についても細かく指導をしてもらい、作業する手元をスマホで動画撮影しながら自分の癖を確認したりしました。チェーンソーの刃のメンテナンスは伐倒・造材作業の効率にもかかわる大切な作業です。現場での安全にもかかわることなので正しい方法を身に着けるようにと説明が行われました。
次回、第2回研修「選木・伐倒研修」では、実際に林地で木の見方や伐倒技術、ロープワークなどを学びます。
この取組は、安芸市流域森づくり構想のアクションプランに基づく活動です
・No.30「森林で活躍する、森林を通して自己実現できる人づくり」
・安芸市流域森づくり構想の取組は森林環境譲与税を活用しています