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安芸市森づくり研修(第2回)を開催しました
農林課 : 2024/10/07
小さな林業(自伐型林業)を知ってもらうこと、林業の学びの場をつくることを目的に毎年開催している「安芸市森づくり研修」が始まっています。
全4回の講座で、小さな林業(自伐型林業)が大切にする木の伐り方(森を見て、伐るべき木を見極める)や環境負荷が少なく、壊れにくい作業道の造り方を学ぶ林業研修です。また、資格(特別教育修了証)の取得が可能な講座も含まれていて、修了証取得をきっかけに森づくりに関心を持ってもらいたいという思いもあり毎年開催しています。
令和6年9月28日(土)、29日(日)に第2回研修「選木・伐倒研修」が安芸市内の林地で行われ、第1回研修で学んだチェーンソーの取扱い技術を実際に森の中に入って木を伐ることでより深く学びました。
林地に赴いての実地研修に先立ち、最後の座学として安全対策に関する講義が行われました。
危険を伴う伐倒作業において、いかに安全を確保するか。
講義ではチェーンソーの安全装備やテキストに記載された基本動作とともに、日本で古くから続く伝統の伐倒技術「三ツ紐伐り」が紹介されました。「三ツ紐伐り」は伊勢神宮のご遷宮に合わせて「御神木」を伐り出す際にも用いられる伝統的な伐倒手法です。チェーンソーのない時代、斧(ヨキ)だけを用いてヒノキの大径木を安全に伐倒するために用いられた「三ツ紐伐り」には、現代のチェーンソーによる伐倒にも受け継がれる合理的な考え方が詰まっています。
伐倒作業で最も危険なのは伐倒方向のズレによるものです。伐倒した木が倒れきらず別の木に引っ掛かってしまう(かかり木)になると、その処理のために作業は危険度を増します。そのため、狙った方向・場所に確実に倒す技術が求められるのです。また、木が倒れるギリギリまで木の安定を保ち、作業者の安全を最大限に確保する必要もあります。それを可能にしているのが「三ツ紐伐り」です。
「三ツ紐伐り」は3人の作業者が斧(ヨキ)で木の幹に3方向から掘り込みを入れます。掘り込み同士がつながると、木は残された部分(つる)により安定を保ちながらも大部分が切り離された状態になります。最後に周囲に伐倒合図を送り安全確保を確認した後、安定を保っていた残された部分(つる)を切り離します。すると、木は安定を失いゆっくりと倒れます。
倒れる木の近くに居る時間をできるだけ短くすることは安全な伐倒作業において重要であり、”つる”を切り離すだけで倒れるようにしておく「三ツ紐伐り」はとても合理的で安全な伐倒方法といえます。
この伝統的な伐倒技術に込められた安全への考え方を知って、チェーンソーを握って欲しいと講師は言います。また、「三ツ紐伐り」を用いた伐倒作業の場面では、木を伐り倒すことを「伐倒」ではなく「寝かす」と表現するといい、作業の対象を大切にする心構え、謙虚な姿勢が安全確保や木材としての品質管理につながっているのだということを学びました。
いよいよ林地に入り実践研修となります。最初に行われた研修はロープワーク。第1回研修で学んだ”もやい結び”を実践しながらロープの先に輪を作り、それを幹の上方へ手の操作だけで上げていきます。安全な伐倒のために木を引きながら伐倒方向をコントロールすることがあり、そのためにロープワークは欠かせない技術です。研修生は教えられた通りにロープを動かしますが、一定以上の高さになかなか達しません。講師は「見て学べ」だけではなく、どのような仕組みでロープが上がるのかといった道理を丁寧に教えてくれます。
伐倒方向を決定する「受け口」と伐倒方向や倒れるスピードをコントロールする「つる」、「追い口」の作り方は「三ツ紐伐り」と同じ原理であり、安全な伐倒作業に欠かせません。受講生は狙った伐倒方向に向けて受け口を作る練習を繰り返しました。
また、安全対策の要は「想像力」だと講師は繰り返します。伐倒方向に切り株があれば、それに倒した木が乗り上げて予期せぬ動きをするかもしれません。そのような動きを想定しながら、もし切り株があれば、できるだけ低くするか、断面を地面と並行にしておくなどの処理が必要になるといいます。
伐倒方向や倒れるスピードをコントロールする「つる(伐り残し)」についても、根が伸びている部分(根張り)を上手く利用することで安全に伐倒することができる場面があるといいます。
伐倒した木を用いて、次は造材(木を運び出すために一定の長さに切り揃える作業)を体験しました。
危険な作業というと伐倒作業を思い浮かべますが、この地面に横たえられた木を規定の長さに切っていく造材作業も多くの危険を伴う油断してはいけない工程になります。作業は山の中で行います。当然地面は傾斜していて、そこに寝かされた伐倒木には複雑な重力がかかっています。また、切り分けていくほど、木にかかる力は変化するため、講師は木の動きをしっかり見て、その変化を感じる力が必要だといいます。
また、「怖い」と感じるのは、起こること、起こるかもしれないことを予知できていないからだと講師はいいます。
怖がりすぎるとスキルアップができません。木を見て、どのように動くのかを予知できるようになると怖さが減る、とにかく木にどのようなテンションが掛かっていて、それがどのように変化しているのかを観察して欲しいといいます。
研修生は、まだ慣れないチェーンソーを頑張って使いこなしながら造材作業を行います。
講師は、研修生が切った断面を見ながらいいます。
断面が乱れているのはチェーンソーを前後左右に振りながら切った証拠。もっとチェーンソーの重みを利用して刃を入れるといいと指導がありました。
また、切った断面からは多くの情報を得ることができるといいます。
枝打ち作業をした時期や成長のスピード、その木が育った山が北向きかどうか、風の当たり方、例えば4年前にどのような風が吹いていたかなどなど。造材作業の時に見ることができる木の断面には時間が閉じ込められているようでした。
次回、第3回研修「小型車両系建設機械操作研修」では、作業道開設に欠くことができないミニバックホー等の操作技術を、実機を使って学びます。
この取組は、安芸市流域森づくり構想のアクションプランに基づく活動です
・No.30「森林で活躍する、森林を通して自己実現できる人づくり」
・安芸市流域森づくり構想の取組は森林環境譲与税を活用しています